障害福祉サービスの報酬改定とは?訪問系サービスの改正ポイントや影響について解説!
2024年度の障害福祉サービス等報酬改定の内容が出そろいました。今回の法改正では、訪問系サービスに手厚い内容となっています。しかし、今回の法改正内容について、まだよくわからないという人も多いのではないでしょうか。そこで、この記事では、障害福祉サービス等報酬改定のうち、訪問系サービスにおける改正の内容について、ポイントを押さえて解説します。
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2024年に施行される改正障害者総合支援法とは?
2024年障害福祉の訪問系サービスの改定ポイント
2024年障害福祉サービス報酬改定のうち、訪問系サービスに関する改定ポイントを3つ紹介します。
処遇改善加算は訪問系サービスに手厚く配分される
障害福祉現場で働く職員が正当に評価されるよう、これまでにも処遇改善加算の見直しは行われてきました。
2024年度の改定では、2024年に2.5%、2025年度に2.0%のベースアップが確実にできるよう、加算率の引き上げが行われます。加算率はサービスによって異なり、人材不足が深刻な訪問系サービスは、ほかのサービスに比べて高い加算率となっています。訪問系サービスにおける加算率は以下の通りです。
サービス区分 | 福祉・介護職員等処遇改善 | |||
---|---|---|---|---|
Ⅰ | Ⅱ | Ⅲ | Ⅳ | |
居宅介護 | 41.7% | 40.2% | 34.7% | 27.3% |
重度訪問介護 | 34.3% | 32.8% | 27.3% | 21.9% |
同行援護 | 41.7% | 40.2% | 34.7% | 27.3% |
行動援護 | 38.2% | 36.7% | 31.2% | 24.8% |
重度障害者等包括支援 | 22.3% | - | 16.2% | 13.8% |
処遇改善加算や特定処遇改善加算、ベースアップ等支援加算については、現行の各加算や各区分の要件と加算率を組み合わせた「福祉・介護職員等処遇改善加算」に一本化されました。この加算は4段階に分かれており、いずれの区分を取得している事業所でも、新加算Ⅳの加算額の1/2以上を月額賃金の改善に充てることが求められます。また、これまでベースアップ等支援加算を取得していない事業所が、一本化後の新加算を新たに取得する場合、ベースアップ等支援加算相当分の加算額については、その2/3以上を月額賃金の改善として、新たに配分することが求められます。具体的な加算の内容は、以下のとおりです。
- 福祉・介護職員等処遇改善加算Ⅳ
新加算(Ⅳ)の1/2以上を月額賃金で配分し、職場環境の改善や賃金体系等の整備及び研修の実施すること。 - 福祉・介護職員等処遇改善加算Ⅲ
新加算(Ⅳ)に加え、資格や勤続年数等に応じた、昇給の仕組みを整備すること。 - 福祉・介護職員等処遇改善加算Ⅱ
新加算(Ⅲ)に加え、改善後の賃金年額440万円以上が1人以上おり、職場環境のさらなる改善や見える化を行うこと。 - 福祉・介護職員等処遇改善加算Ⅰ
新加算(Ⅱ)に加え、経験技能のある福祉・介護職員を事業所内で一定割合以上配置していること。
この新加算では、職種間配分ルールも統一されました。新加算では、福祉・介護職員への配分を基本としたうえで、特に技術や経験のある職員に重点的に配分することと定義づけられました。ただし、事業所内での柔軟な配分も認められます。さらに、処遇改善加算等の対象に、就労定着支援の就労定着支援員、自立生活援助の地域生活支援員、就労選択支援の就労選択支援員も追加されました。
報酬改定で訪問サービスの基本報酬が引き上げられる
2024年度の改定では、訪問系サービスの基本報酬が引き上げられました。居宅介護における基本報酬について、詳しく見ていきましょう。
まず、居宅における身体介護が中心の場合と、通院等介助(身体介護を伴う場合)が中心の場合の単位数は、以下のとおりとなっています。
所要時間 | 現行→改定後 |
---|---|
30分未満 | 255単位→256単位 |
30分以上1時間未満 | 402単位→404単位 |
1時間以上1時間30分未満 | 584単位→587単位 |
1時間30分以上2時間未満 | 666単位→669単位 |
2時間以上2時間30分未満 | 750単位→754単位 |
2時間30分以上3時間未満 | 833単位→837単位 |
3時間以上 | 基準単位916単位→921単位 |
家事援助中心と身体介護を伴わない通院等介助場合、1時間30分未満までは各時間ともに1単位引き上げとなりました。
また、1時間30分以上の場合は、基準単位が2単位引き上げられました。
そのほかの訪問系サービスについては、重度訪問介護は1~20単位、同行援護では1~5単位の引き上げとなっています。
行動援護については、3時間未満までは7~30単位引き上げとなったものの、3時間30分以上からは6~55単位引き下げとなりました。利用時間が長いほど、引き下げ率が高くなっています。
また、重度障害者等包括支援については、以下のとおりです。
項目 | 現行→改定後 |
---|---|
居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、 生活介護、自立訓練(機能訓練)、自立訓練(生活訓練)、 就労移行支援、就労継続支援A型、就労継続支援B型、 就労定着支援または自立生活援助を提案した場合 |
(1)所要時間1時間未満の場合 203単位→204単位 (2)所要時間1時間以上12時間未満の場合 基準単位 303単位→305単位 ※所要時間1時間から計算して所要時間30分を増すごとに 100単位→101単位を加算した単位数 (3)所要時間12時間以上24時間未満の場合 基準単位 2501単位→2514単位 ※所要時間12時間から計算して所要時間30分を増すごとに 98単位→99単位を加算した単位数 |
短期入所を提供した場合(1日につき) | 953単位→973単位 |
共同生活援助(指定障害福祉サービス基準第213条の2に 規定する外部サービス利用型指定共同生活援助を除く)を 提供した場合(1日につき) |
1003単位→1019単位 |
障害の重度化や障害者の高齢化など、訪問系サービスにおける地域のニーズへの対応
2024年度の改定では、障害の重度化や障害者の高齢化など、訪問系サービスにおける地域ニーズへの対応として、以下の4点が見直されました。
1つ目は、居宅介護の通院等介助等の対象要件の見直しです。居宅が始点または終点となる場合、通所系サービスの事業所や地域活動支援センター等から病院等の目的地へ移動する場合の通院等介助においても、同一の事業所が行うことを条件に、支援の対象として算定できるようになりました。
2つ目は、熟練従業者による同行支援の見直しです。重度訪問介護では、熟練従業者の同行支援をより評価する観点から、熟練従業者および新任従業者の報酬が、現在の所定単位数の85%、合わせて170%から、所定単位数の90%、合わせて180%が算定できるようになりました。また、現在15%加算対象者である医療的ケア等の専門的な支援・技術が必要な重度訪問介護加算対象者に対する支援については、採用から6カ月以内の新任従業者に加え、対象者に対する支援に初めて従事する者についても、熟練従業者の同行支援の対象となり、所定単位数の90%、合わせて180%を算定できるようになります。
3つ目は、同行援護の特定事業所加算における加算要件の見直しです。同行援護では、専門的な支援や技術を有する人材を配置した事業所が評価されるようになります。現状の加算要件である「良質な人材の確保」の要件に、新たに「盲ろう者向け通訳・介助員で、同行援護従事者の要件を満たしている者の割合が20%」が追加されました。
4つ目は、訪問系サービスにおける国庫負担基準の見直しです。障害者の高齢化に対応するため、新たに介護保険対象者の区分が追加となりました。また、重度訪問介護の国庫負担基準では、重度障害者の単位数の見直しや、介護保険対象者の区分が細分化されました
障害福祉サービスの報酬改定が訪問事業所に与える影響
障害福祉サービスの事業所数や利用者数は増えているものの、支える人材の不足や物価高騰の影響を受け、このままでは制度を継続できなくなる可能性もあります。
今回の改定により、基本報酬の見直しが行われたことで、小規模の事業所でも運営しやすい形になったと考えられるでしょう。
また、訪問系サービスの処遇改善加算率が高くなったため、人材確保や定着が図りやすくなります。現行の各加算や区分が見直されて4段階の新加算となったことで、処遇改善加算が取りやすい仕組みとなり、多くの事業所で処遇改善のための措置が取りやすくなるでしょう。
さらに、熟練従業者の同行支援や特定事業所加算が見直されたことで、技能や経験のある職員がより評価される形となりました。評価される職員にとっては、仕事に対するモチベーションが上がり、キャリアアップを目指すことや、長く仕事を続けようという意欲につながるため、長い目で見れば、職員の定着に良い影響をもたらす可能性があります。
2024年報酬改定は訪問系サービスに重点を置いた結果に
2024年度の障害福祉サービス等報酬改定は、ニーズは高いけれども人材不足に悩む訪問系サービスに重点を置いた内容となりました。
訪問系サービスにとっては、基本報酬や処遇改善の加算率アップなど、満足のいく結果と言えるでしょう。
施行は4月から始まるため、事業所では改正に合わせるための対応に追われる可能性があります。
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