支援の質について ―対「人」援助とは―

「人の尊厳を尊重する」と調べてみると、『その人が人として生き、存在していることそのものをかけがえのない価値として大切にすること』だと、あるところでは説明されていた。「人」はそれぞれ個別的で多様な側面を持つ。

 

疾患や障がい、生活の困りごとなどはその「人」のごく一部でしかなく、お一人お一人にその人ならではの多様な魅力が多くある。

そうした方々と向き合う援助職お一人お一人にもまた確かな魅力があり、その間にしか生まれない唯一無二の何かが確かに存在すると、これまでの20年余りの福祉従事経験を通じて私は思う。

 

私はこれまでずっと精神障がいのある方の支援に携わってきたが、まだこの仕事をやり始めて間もない頃に、状態がいいとは言えず意に反して入院することになったある方に病室で言われた一言は忘れられない。

「ゴチャゴチャと(説明など)言っているが、まずお前は何者なのだ?」と。

しばらく後になってご本人に確かめられたのだが、その方が言っていた真意は、私の仕事としての役割や手続き的なことではなく、『あなたはどういう人間で、どういう考えや想いのある中で、なぜ自分に向けて発してこようとする存在なのか?』であった。

 

いわゆる提供するサービスや支援の質が「人」が変わっても担保されることは大切な一方で、あなたとその方でしか起き得ない「関係性の産物」が、その方にとっての生活の質や生きる価値につながることもまた大切なのではないだろうか。

本来はそうではないと思うが、敢えて分けて考えてみると、「人間関係の質」が土台にある上で、「対人援助の質」が語られるべきなのだろうと感じ入る。そこはやはり、「人」と「人」との関係性なのだから。

平良 幸司

  • 横浜市保土ケ谷区精神障害者生活支援センター 所長

精神保健福祉士として、精神科病院→生活支援センター→生活訓練事業所での現場経験を経て、現職へ。

主に精神障がいのある方々やそのご家族への相談・生活支援と、誰もが住みよい地域づくりについて、関係機関等と協働して取り組んでいる。

関連して、一般社団法人日本メンタルヘルスピアサポート専門員研修機構理事補佐としても活動中。

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