私の考える介護の質~ケアの喜び~

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介護コラム

渡辺 道代 氏

東洋大学 准教授

前回、前々回では、家族や家族の支援を中心に書いていきましたが、今回は介護する人全般について、ふれていきたいと思います。

ケアの質を考える上では、“ケアのすることの喜びや楽しみ”について考えることは欠かすことができません。
もちろん、ケアしたことによって、「歩けるようになった」とか「ご飯が食べられるようになった」など、ご本人の状態が良くなっていくことは本当に喜びだと思います。
ケアの効果が他にもわかるような変化はいろいろな形で示すこともできます。
しかし、ケアにかかわることの喜びや楽しみの本質は、雰囲気や思いのような、あらわしにくい中にあるように思うのです。

以下はあるホームページに掲載されていたものを抜粋したものです。

『「介護の仕事」とはどんな事をしているの?』と漠然とわかっていても実際携わってみないと見えてこない面があるかと思います。一般的には介助を必要とされるご高齢者へのお手伝いがメインになりますが、実際はお年寄りと「遊んでいる」という方が適しているのかもしれません。生活には必要である「食事」「排泄」「入浴」などの介助があっても、一番大切なのはコミュニケーションをとる事や楽しんで生活して頂く事が重点となり、それの達成には私たち介助者も楽しみながら接していく事が大切です。
ご高齢者にとって将来の事や健康状態、又、自分の存在価値など様々な不安を抱いて生活していますが、今、この瞬間の楽しみを感じて頂く事で「不安」から「生きがい」へと変えられます。楽しみとは、自然と笑顔が生まれる瞬間でありこの瞬間こそが介護職の味わいでもあります。一緒に歌を歌ったり、買い物に出かけたり、世間話をして笑ったり、とプライベートでおじいちゃん、おばあちゃんと接している時間の延長として介護職があるように感じる事があります。時にはお菓子を食べながらお話をしてみたり、桜を見に行って単純に「きれいだね」と共感したり、ファミリーレストランで一緒に食事をしてみたり、とこれを楽しい仕事と思う事が出来れば、毎日遊んでいるのにこれが仕事!?と感じる事もあります。又、お年寄りからは様々な事を教えられ、とても勉強になる事で自分自身の人間としてのスキルアップにも繋がってきます。……【特別養護老人ホーム職員 匿名 男性32歳】

……まだ若かった私は、幾度となくおばあちゃん達に試され、何度もやめようと思った。しかし、介護していく中で知る生活の知恵の素晴しさや、何よりお年寄りのありがとうという「笑顔」を見て、辞めたらもったいないと思うようになった。周りの介護職員のアドバイスもあり、考え方を変え接するようにしていったところ、相手の立場に立って接することが出来るようになった。ただ介助するのではなく、冗談を言いながら接することで拒否されていた介助も笑いながら行なえた。お年寄りが笑顔になるために、薬の見直し、家族との交流を増やした。1人が笑顔になると、周りの人も笑顔になる。なにより自分が嬉しくなる。自分が関わることで笑顔になる瞬間が増えていくことを実感でき、この職の喜びを感じた。……【地域密着型サービス事業所職員匿名 女性26歳】

相模原市ホームページ 「平成20年度 さがみはら「介護の日」記念事業から」「介護職員の声~介護という仕事に携わる喜び」』

日常生活の中で利用者の方に関わることの喜びや楽しみが表現されているように思います。
介護することによる喜び、楽しみの本質はなんでしょうか。
個々にちがうのかもしれませんが、利用者と私(介護者)との交流の楽しみが原点になるのだと思います。

家族で介護している人のインビューでのなかでもこのような回答がありました。
「……基本的にやさしい介護とかさ、介護はやさしくないんですよ。楽しい介護なんて、介護が楽しいわけはないんだから。本なんかには回答はないですよ。本もいっぱい買ったけど、何をやったらいいかは書いてない。やさしい介護や楽しい介護はない。明るい介護しかない。どんなに明るくできるか。介護者が明るくなれば、介護を受けるお年寄りは明るくなるんです。やっと気がついた。でもなかなかできないんだよ。……」

介護の大変さを実感しつつも、明るく介護していこうという思いが見えてきます。
私たちは日々の業務の中で、心身が疲労し参ってしまうことがあるかもしれません。

そのときに、自分自身の介護の原点はなんだったのだろうかと立ち止まって考えてみませんか。

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