私の考える介護の質~介護者へ向ける言葉~

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介護コラム

渡辺 道代 氏

東洋大学 准教授

ここ数年、家族介護者の支援をめぐる議論が活発になってきました。

2009(平成21)年に結成された「男性介護者と支援者の全国ネットワーク」や2010(平成22)年に発足した「ケアラー連盟」などに代表されるように、介護者を支援する団体や活動が増えてきました。
介護者支援がマスコミでも注目されることが多くなったように思いますし、「介護される本人だけでなく、介護する家族も大変!」ということが社会全体に少しづつ受け入れられてきたのだろうと感じます。
現場では、介護家族に接するケアワーカー・ケアマネジャーに、どのような関わり方が望まれているのでしょうか。

あるヒヤリング調査で、とても大変な介護をされていたご家族の方の発言に次のようなものがありました。

「愚痴を言ったり怒ったりすると後味が悪くて、いつも後悔してしまいます。私は『大変!大変!』と言わないように心がけてきました。」
「『がんばれ』 とか 『あなた大変ね』 というのはあまりかけて欲しくない言葉です。
言われると心が折れてしまいそうでした。」

その発言を聞いて、私は日本認知症学会被災地支援マニュアル作成ワーキンググループが作成した『被災した認知症の人と家族の支援マニュアル<介護用>』(2011年4月18日作成)を思い出しました。
(日本認知症学会ホームペジ http://dementia.umin.jp/kaigo419.pdfを参照してください

その中で「ケアスタッフへの支援」で次のように書かれています。

「*挨拶や声かけは前向きに:「大変だね」という挨拶はやめて、「やり甲斐があるね」「少し進んだね」と、前向きな言葉を口にしましょう。脳には、自分の言ったことを正当化する働きがあります。「つらい」「大変」「苦しい」「疲れた」などネガティブな言葉は口にしないように心がけましょう。スタッフ同士で積極的にほめ合いましょう。」

「*『がんばってね』ではなく『がんばってるね』と互いに声かけしましょう。前者はもっとがんばれとがんばりを認めていないので禁句、後者は相手のがんばりを認めています。他人から認められることが心の支えになります。大変な生活の中にも小さな幸せがあるはずです。それに気づくことで心理ストレスが和らぎます。」

ケアスタッフ向きなので、介護者のためには多少、工夫が必要だと思います。
しかしその気づかいは学ぶべきものがあるのではないでしょうか。

私たちは、通常、介護者にどのような言葉を発していますか。
大変だからこそ、ネガティブな言葉を使いたくない・かけられたくない介護者の気持ちを理解し、介護者のがんばりや努力を認めているというメッセージをどれだけ送っているでしょうか。

中には介護者の生活や思いが眼中にないのではないかと思うケアワーカーやケアマネジャーの方もいますよね。

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