障害者グループホーム経営の落とし穴とは?回避するポイントも解説

福祉事業を展開している経営者のなかには、障害者グループホームへの参入を検討している人もいるでしょう。
障害者のグループホーム経営は、事業計画書やマーケティング戦略などをしっかり立てておかないと思わぬところでつまずき、すぐに廃業に追い込まれる可能性もあります。

この記事ではそのような失敗を回避するためのポイントについて解説しています。障害者グループホームの開業を考えている経営者は、この記事を読んで開業の準備を進めていきましょう。

障害者グループホームとは

障害者グループホームとは、障害者総合支援法が定める障害者(身体障害者、知的障害者、精神障害者、難病患者など)が、日常生活のサポートを受けながら共同生活を営む住まいです。

身体障害者の場合利用できるのは65歳未満との条件がありますが、もともと障害者グループホームを利用していた人は、65歳を迎えた時点で障害者グループホームか高齢者施設のどちらを利用するか選択することが可能です。

障害者グループホームの形態は主に3種類

障害者グループホームは大きく3種類に分けられます。

  • 介護サービス包括型
    事業所のスタッフが、夜間や休日に食事、入浴、排せつなど日常生活のサポートを行う。
  • 日中活動サービス支援型
    事業所のスタッフが、夜間や休日だけでなく、日中も日常生活のサポートを行う。
  • 外部サービス利用型
    事業所に委託された外部の居宅介護事業所が、主に夜間のサービス提供を行う。

上記のほかに、障害者グループホームの近隣に住む利用者に対して日常生活のサポートを行うサテライト型などもあります。また、どの形態も、障害支援区分などの利用条件はありません。

障害者グループホームの現状

障害者グループホームの現状はどうなっているのでしょうか。

障害特性によっては対応できるグループホームの整備が不十分

厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課の「障害者の居住支援について(共同生活援助について)」によると、障害者グループホームの利用者は増えていますが、障害特性によっては、それに対応できる施設が十分に整備されていません。そのため、自身のニーズにマッチした施設が見つけられず、適切な支援を受けられない利用希望者も多いようです。

経験不足の新規参入業者が多い

需要と供給のバランスがとれていない障害者グループホームにビジネスチャンスを求めて、毎年、多くの事業所が参入しています。しかし、経験不足や準備不足の事業所も多く、倒産や廃業に追い込まれるケースが少なくありません。

このような状況下で、これから障害者グループホームの経営に乗り出そうと考えている事業者が成功するためにはどうしたらよいのでしょうか。次項から考えていきましょう。

障害者グループホーム経営で陥りやすい「落とし穴」

障害者グループホームの経営は、どのようなところで失敗するのでしょうか。いくつか例を挙げてみましょう。

法令を理解し遵守する難しさ

障害者グループホームを運営するためには、障害者総合支援法、消防法、建築基準法、労働基準法などの法令を遵守することが大前提です。この法律の内容をすべて理解せず、守るための準備を怠ると、そもそも開業ができないこともあります。

経営ノウハウ不足

現在、障害者グループホームの数は不足している現状ですが、経営を成功させるためには、適切な戦略とノウハウの獲得が必要です。
例えばリサーチやマーケティング調査をきちんと行わずに事業をスタートさせると、近隣に利用する人がいない、交通の便が悪くて家族が通いにくいなどの理由から利用者が集まらないという事態に陥る場合もあります。

人材確保の難しさ

障害者グループホームには管理者、責任者、世話人、生活支援員スタッフなどが必要です。そして、サービス管理責任者の人数は利用者30人で1人、世話人は利用者6人に対して1人と細かく決められています。介護業界は人手不足であることもあり、スタッフが集まらず、障害者グループホームの開設を断念する事業者もあるのが現状です。人材が集まらないと指定申請が通らず開業できません。

障害者支援のノウハウ不足

障害者グループホームは、利用者一人ひとりの障害の特性や程度に応じた支援を提供する必要があります。ノウハウ不足から一人ひとりにあったきめ細やかなサービスの提供ができない場合、利用者の満足度が下がり、グループホームの退去につながる可能性があります。これは直接的な経営の悪化に結びつきます。

障害者グループホームの経営で失敗しないポイント

事前準備を怠ると開業しても失敗するリスクが高い障害者グループホームですが、それでも始めたいと思っている事業者は、どのような点に気をつければよいのでしょうか。

周辺地域の調査(競合施設、交通や生活の利便性)

立地は重要です。周辺に競合施設があるのか、駅やバス停から近いのか。また、生活する利便性などについてもリサーチしておくことが大切です。「利用者にとって暮らしやすい場所」を優先的に考えて選ぶことで、失敗を回避できる可能性は高くなるでしょう。

地域のニーズの把握

「もし、ここで開業したらどのような人が利用してくれるだろう?」という事前の調査は必ず行いましょう。利用者のニーズを知ることで、どのような施設を作ればいいのかが把握できます。
また、障害者グループホームは、利用者が行方不明になった際や災害時に、近隣の人に協力してもらうことが多いものです。そのため、近隣の住民が障害者施設に理解があるかどうかについても、開業場所を選ぶ際には大切なポイントです。

しっかりとした収支計画

障害者グループホーム開設にこぎつけても、収支決算が赤字で廃業せざるをえなくなるところもあります。そのような事態にならないよう、開業前に詳細な事業計画書を作成することは欠かせません。
特に固定費のなかでも人件費は、正社員、パートなどの雇用形態に応じて社会保険加入が必要だったり、特別なスキルを持つ社員を雇うと特別手当が発生したりするため、しっかりと見積もっておく必要があります。

利用者確保の営業活動

社会福祉施設で営業活動というとイメージしにくいかもしれませんが、利用者が集まらないと経営は成り立ちません。また、サポートを必要としている利用者に、施設の存在を知ってもらう目的もあります。
利用者になってくれそうな人に、事業所の存在と魅力を伝えるためには、地域住民と積極的に交流して口コミで広めてもらうことも考えましょう。パンフレットや広告だけでなく、SNSも有効な宣伝ツールなので、営業活動のひとつとして活用するのもおすすめです。

積極的な人材確保と支援の質の向上

的確なマーケティング戦略を用い、効果的な営業で利用者を集めたとしても、実際のサービスが利用者に満足してもらえなければ、利用者はすぐに離れていってしまいます。そのため、障害者支援のノウハウを持った優秀な人材を確保し、継続的に教育を行うことが重要です。また、加算に影響する有資格者の採用は積極的に行いましょう。

障害者グループホーム経営に失敗しないためには事前準備が大切

障害者グループホームは障害者のニーズの多様化を背景に需要が増えており、新たに経営に乗り出す人も多いですが、その経営は決して簡単なものではありません。事前の準備不足から利用者やスタッフが集まらずに廃業という落とし穴もあるからです。失敗を回避するためには地域のニーズや周辺環境の調査、支援の担い手となる人材の確保など十分な事前準備が必要です。

介護ソフト「介舟ファミリー」を販売する当社では、障害福祉サービスの事業所へのお役立ち情報を数多く発信しています。障害者グループホームの経営を検討している経営者の方にも参考になる記事がたくさんあります。ぜひ、こちらもご覧ください。

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