権利意識の強い高齢者が増えている!

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介護コラム

結城 康博  氏

淑徳大学 総合福祉学部 教授

昨今、【権利意識】の強い要介護者や家族が増えているのではないだろうか?
【権利意識】とは、上から目線の要介護者や家族を意味する。例えば家族が、
「介護保険があるから、親の面倒はヘルパーや施設に、しっかりと看てもらえるはずだ。ちゃんとやってもらわないと。うちの親は心身の機能が低下しているのだから!」
と…。確かに要介護者やその家族が抱えている問題は深刻で、日々の介護生活は大変であろう。だからといって、
 看てもらって当然/ヘルパーを家政婦のように勘違い!
など、利用者側にも《誠意》がなければ介護職は辞めてしまう。

最近では、利用者による介護職へのセクハラ問題も顕在化している。
例えば、70代後半の要介護2の高齢者から、毎回介助中に胸を触られる経験があったという話を聞いたことがある。
被害に遭う介護職自身「辞めてください」と言っていいのか?
我慢しながら仕事を続け、どうしても耐えられず辞めてしまうケースも珍しくない。
確かに、認知症といった病気によって、介護職への対応が不条理だったり問題行動として表面化しているであれば、認知症ケアによって何らかの対応も可能であろう。

身体機能が低下し要介護1もしくは2といったケースであっても、例えばヘルパーの介助時に、高齢者やその家族が
 ●全く挨拶もしない
 ●細かいことで文句を言う
 ●掃除や洗濯など粗を探して批判する
といった振る舞いをしていたら、希少価値となっていく介護職員は《手》のかからない高齢者を選んでいくようになる。
いくら専門職とはいえ、社会的マナーが欠ける利用者や家族に対して敬遠しがちになるからだ。

しかし、
 ●愛想が良い高齢者
 ●いつも感謝する家族
などのケースでは、介護職員も自然とやりがいが生じ、仕事にも前向きになっていく。
介護業界に限らず、日常的な経済活動においても、《売り手》と《買い手》との間には【ホスピタリティ(もてなし)】といったことが重視される。介護分野も例外ではない。
利用者・家族と介護職員間との【信頼関係あってこその介護】ということを啓発していくことが重要である。

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