水戸さんは、「そんなことまでダメ、臭いからダメ」とヘルパーの手を跳ね除けました。
ヘルパーが、反射的に「女同士じゃない、大丈夫!」と言うと、水戸さんは体の力を抜き、自分から壁に手をついたのでした。
そしてお尻がきれいになると、浴槽の湯を見て、「そうだよな」と言って入浴したのでした。
ヘルパーの「女同士じゃない、大丈夫!」という言葉で、水戸さんは介護を受けることに対する折り合いがつき、介護を受けながら生きていくという、新しい自己が獲得されたのです。
壁に手をつき、お尻を洗ってもらっている水戸さんは、ヘルパーに一方的に「されている」のではなく、ヘルパーが洗いやすいように自ら協力しているのです。
高齢になっても、認知症があっても、人は自分を変化させ、新しい自己を獲得し、生涯を通して発達していくことができます。
そして、それを支えたのは、利用者を受け止め、向かい合おうとする、へルーパーの真摯な姿勢と努力の積み重ねです。
その後、水戸さんは、ヘルパーと一緒に炊事をするようになりました。
(ホームヘルパーの手による1000の事例研究から)