新型コロナ5類移行後で介護現場はどう変わる?

新型コロナウイルス感染症について、2023年5月8日から感染症分類が5類に移行しました。これまで行われていたさまざまな感染対策も、徐々に緩和の方向になってきています。介護報酬の面でも、これまでの臨時的な取り扱いが見直しされており、介護現場ではいろいろな動きがあり不安に感じている人も多いのではないでしょうか。この記事では、新型コロナウイルス感染症の「5類移行」が介護現場に与える影響と今後の注意点について、詳しく解説します。

5類移行後のコロナ特例措置の概要と介護現場に与える影響

新型コロナウイルス感染症の取り扱いは、2023年5月8日に感染症分類の2類から5類へ移行しました。しかし、5類移行後も新型コロナウイルス感染者が発生するリスクはあります。そのため、新型コロナウイルス感染者が出ても安定的な介護サービスの提供が実施できるよう、介護報酬上の臨時的な取り扱いについての見直しが行われました。

具体的な見直しポイントは、以下のとおりです。

  • 利用者や職員が新型コロナウイルスに感染しても、安定的にサービス提供を行うために必要な臨時的な取り扱いや、ワクチン接種を促進するための臨時的な取り扱いについては、当面継続。
  • 感染対策を行ったうえで合理的な取り扱いに見直すことができるものについては、見直しを行ったうえで臨時的な取り扱いを継続。
  • 臨時的な取り扱いがなくても必要なサービスを提供することができるものについては、2023年5月7日をもって取り扱いを終了。

介護現場が知っておくべき5類移行後の特例措置の内容

新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴い見直しとなった特例措置の内容のうち、介護現場が知っておくべきものについて詳しく見ていきましょう。

当面継続するもの

5類移行後も当面の間、利用者や家族、職員などに新型コロナウイルスの感染者が出た場合にも、安定的にサービスが提供できるための特例や、感染を予防するためのワクチン接種の促進のための特例などは継続します。

例えば、ワクチン接種の促進のための特例は、利用者にワクチンを接種するために職員が従事する場合、人員基準の柔軟な取り扱いを行う、サービス利用中のワクチン接種について減算を行わないといった措置です。この特例は、全サービス共通です。

入所系サービスでは、退院患者を受け入れた場合の入退院前連携加算の算定が最大30日間可能になる取り扱いについては継続となります。また、退院患者を受け入れた場合の人員基準の取り扱いも当面継続です。さらに、在宅復帰率やベッド回転率に連動する報酬については、影響を受けた月を除いて計算可能とする取り扱いも継続されます。

通所系・訪問系では、通所系の事業所が休業になった際に代替として訪問でのサービスを提供した場合、通所サービスと同等の報酬が算定可能となる取り扱いが、当面の間継続となっています。

一定の要件のもと継続するもの

一定の要件のもと継続するものは、2種類あります。どちらも、全サービス共通です。

1点目は、感染者へのサービス提供の有無を問わず、幅広く新型コロナウイルスの影響があった場合に人員基準違反・減算としない特例です。この措置については、利用者や職員に感染者が発生した場合において、柔軟な取り扱いを継続することになりました。

2点目は、研修が受けられない場合の特例です。下記に示す研修については、実習や実地研修に限り、新型コロナウイルスの影響によって未受講となった場合でも、基準違反や減算を行わないことになりました。

  • 介護支援専門員実務研修
  • ユニットリーダー研修
  • 認知症グループホーム管理者等に対する認知症介護実践者研修

終了するもの

5類移行に伴い、各種制限が緩和されます。緩和の結果として特例的な取り扱いがなくても必要なサービスを提供することができるものについては、2023年5月7日をもって特例が終了となりました。

例えば、これまでの新型コロナウイルス感染症への緊急的・社会的対応を踏まえた以下の特例については、すべてのサービスに共通で、通常どおりサービス提供や事務処理等を行うこととなっています。

  • 災害における取り扱いを参考にした各種サービスや申請、自治体事務の柔軟な取り扱い
  • 外出自粛要請やまん延防止等重点措置、慰労金などに関連した柔軟な取り扱い
  • ケアプランで予定されていたサービス提供が行われない場合の居宅介護支援費の算定
  • 感染拡大防止への対応を評価する観点から行う特例的な取り扱い

入所系では、サービスの簡略化に関する特例について、感染対策をしたうえで通常どおりにサービス提供を行うことになりました。
通所系・訪問系においても、以下の3点については、感染対策をしたうえで通常どおりにサービス提供を行うことで、特例扱いが終了となりました。

  • 感染対策の観点からサービス提供を短時間とした場合の最短時間の報酬算定
  • 安否確認や療養指導、福祉用具貸与計画などの説明を電話で行った場合の一定の報酬算定
  • モニタリングや訪問体制強化加算における、訪問が困難な場合の柔軟な取り扱い

5類移行後に介護サービス事業所の責任者が気をつけること

新型コロナウイルス感染症が5類移行となった以降も、介護サービス事業所の責任者は感染対策を心がける必要があります。そこで、介護サービス事業所の責任者がとるべき感染対策について、通常時と感染時に分けて紹介します。

日ごろからの感染対策

5類移行後、新型コロナウイルスの感染対策の考え方は、個人の選択を尊重し自主的な取り組みを基本とする方向に切り替わりました。しかし、感染時の重症化リスクが高い高齢者や障害者などと接する機会の多い介護事業者については、厚生労働省が日ごろからの感染対策として以下3点について注意を促しています。

マスク着用

マスクの着用については、個人の主体的な選択を尊重し、個人の判断にゆだねられます。しかし、高齢者や障害者などは感染時の重症化リスクが高いため、職員は勤務中のマスク着用が推奨されています。ただし、周囲に人がいない場合や、利用者と接しない場面で会話を行わないようなときには、着用について管理者がその都度判断する運びとなりました。

なお、高齢者施設で高齢者に面会する場面では、マスク着用が推奨されています。

効果的な換気の実施

必要な換気量を確保することは、感染対策の基本です。各施設の実情に応じて換気を行い、感染対策を実施しましょう。もっとも望ましいのは、機械換気による常時換気です。機械換気が適切に行えるよう、定期的な装置確認やフィルター掃除を行いましょう。

機械換気がない場合は、窓開け換気を定期的に実施します。十分な換気量を確保できない場合は、換気扇や扇風機、サーキュレーターの使用や、HEPAフィルター付きの空気清浄機の導入を検討しましょう。

面会時の感染対策

新型コロナウイルス感染症対策として、高齢者施設では長らく面会が中止となっていました。しかし、介護保険施設等の運営基準には、「常に入所者の家族と連携を図るとともに、入所者とその家族との交流の機会を確保するよう努めなければならない」などと記載されています。そのため、厚生労働省も面会の再開を推進しています。

面会を行うことで、入所者と家族のつながりや交流が図れるため、入所者の心身の健康に良い影響を与えます。面会の再開に伴い、面会者には感染経路の遮断の観点から感染対策を実施していることを説明し、理解を得ましょう。

感染者が発生したときの感染対策

感染症対策を実施していても、新型コロナウイルス感染者が発生する可能性はゼロではありません。感染者が発生した場合には、「介護現場における感染対策の手引き」を参考に対応を実施しましょう。 具体的には、感染者にかかわる情報収集や共有に努め、居室や利用した共有スペースの消毒や清掃を行います。感染者や感染の疑いのある利用者のケアにあたる場合には、サージカルマスクやゴーグル、フェイスシールドなどを使用します。

一般的な感染対策を継続し感染リスクを最小限に抑えよう

新型コロナウイルス感染症が5類に移行した現在、これまで制限されていた介護事業所での面会や外出が再開されています。職員だけでなく、利用者も多くの人と接する機会が増えていくなかで、新型コロナウイルスへ感染する可能性も上がることでしょう。これからは、利用者の心身の健康を維持しながらも、感染リスクを最小限に抑えるような対応が求められます。マスク着用や換気などの一般的な感染対策は、今後も続けていきましょう。

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