介護AIは介護人材不足の救世主?AIが介護にもたらす影響

介護の人材不足の問題は、いまや介護業界だけでなく社会全体の問題となっています。
この問題の解決策のひとつとして、今注目されているのがAIです。すでにさまざまな業界で導入されているAIが、介護業界ではどういう活躍を見せるのか、気になっている人も多いでしょう。
この記事では、介護業界におけるAIの必要性や効果について、活用事例も含めて詳しく解説します。

介護業界だけでなく意外と身近なところで活躍するAI

AIとは、人工的につくられた知能を持つコンピューターのことで、一般的には人工知能といわれています。コンピューターの性能が大きく向上したことで、機械でありながら、コンピューター自体が「学ぶ」ことができるようになったことで誕生しました。つまりAIは、人間が指示を送らなくても、経験から学んで新たな入力を獲得していきます。そのため、情報を分析して柔軟にタスクを実行することが可能です。

いまや、AIは身近なところで活躍しています。例えば、エアコンや掃除機、冷蔵庫といった家電製品、車の自動運転システム、インターネットの翻訳機能などがあります。カスタマーセンターのチャットボットや、囲碁や将棋などのAI対戦ゲームなど、その活躍は多岐にわたるといえるでしょう。

介護業界でAIが必要とされる3つの背景

AIは大量のデータを処理し、そこから適切な解答や行動の抽出が可能です。そのため、従来の技術では難しかったこともシステムに任せることができるようになりました。
AIが持つ機能は、介護業界が抱えるさまざまな問題の解消につながることが期待されています。
厚生労働省や経済産業省が、介護ロボットの開発・導入や現場のICT化を積極的に支援している現在、介護現場にAIを導入するメリットは大きいといえるでしょう。介護業界でAIが必要とされる背景には、次の3つが考えられます。

生産年齢人口の減少による介護人材不足

日本は少子高齢化が加速しています。15歳以上65歳未満の生産年齢人口は、1995年にピークを迎えた後は減少し続けています。このまま推移していくと、2050年には5,275万人まで減少する見込みです。2021年の生産年齢人口は7,450万人なので、約30年で2,175万人、29.2%も減るのです。

生産年齢人口が減少すると、労働力不足にも大きな影響がおよぼされます。特に、すでに慢性的な人材不足に悩む介護業界への影響は深刻です。厚生労働省によれば、今後20年以内に必要な介護人材は約280万人で、このまま人口減少に歯止めがかからなければ、介護人材不足問題に拍車をかける可能性は大きいでしょう。

ここでAIに介護業務の一部を任せられると、業務効率化が実現し、少ない人数でも介護業務に専念することができます。その結果、質の高いサービスを提供することができるでしょう。また、職員の身体的・精神的負担の軽減にもつながります。

団塊世代が全員後期高齢者になることによる介護難民の増加

要支援・要介護認定率は、年齢が高くなるほど上がります。「令和4年度高齢社会白書」によると、65歳~74歳の要支援認定率は1.4%、要介護認定率は2.9%なのに対し、75歳以上の要支援認定率は8.8%、要介護認定率は23.1%と跳ね上がっています。2025年には団塊世代が全員75歳以上になることから、介護や医療の需要は一段と高まるでしょう。

介護が必要な人は増える一方で、介護人材は慢性的に不足している状況が続いているため、人材不足は解消されません。その結果、介護を必要とするのに十分な介護を受けられない人(介護難民)が年々増加しています。特に、人口が集中する都市部では、介護難民の割合が高くなっています。今後、この問題は地方にも広がっていくことが予想されるでしょう。

介護現場にAIを導入し介護業務を効率化すれば、少ない人材でも介護業務そのものに集中できるようになり、より多くの要介護者を受け入れられる可能性が高くなります。

平均寿命が延びたことで起きた社会保障費の増大

日本は世界でもっとも平均寿命の長い国であり、毎年のように平均寿命は延び続けています。平均寿命が延びたことで高齢者人口も増加しており、介護を必要とする人が増えた結果、社会保障費は年々増しています。厚生労働省の「令和2年度 介護保険事業状況報告(年報)」によれば、2020年度における1人あたりの介護給付および予防給付費は、28万6千円となっています。前年度の28万円に比べ6千円、2%も増えました。

そこで、AIを活用して自立支援を促し、要介護者を減らし健康寿命を延ばす取り組みがされています。千葉大学とNEC(日本電気株式会社)は、実際に支払われた医療費や介護費のデータ、特定健康診査の結果などをもとに、AI技術を駆使して生活習慣病や認知症を予測する研究を共同で行っています。この研究が実用化されれば、健康寿命が延びて社会保障費の増大を食い止められる可能性も出てくるでしょう。

導入されている介護AIの例とその効果

介護現場では、具体的にどのような介護AIが活用されているのでしょうか。ここでは例として5つ紹介します。

介護ロボット

コミュニケーションを得意とする介護ロボットは、介護レクリエーションや健康体操のプログラムのほか、日常会話もできます。100人以上の名前と顔を覚え、名前を呼びかけて顔を見ながら話します。介護ロボットとの会話が自然な交流を生み、高齢者の気分の安定や喜びにつながっています。また、職員が気づいていなかった高齢者のコミュニケーション能力を引き出すこともあります。レクリエーションや会話が苦手な職員にとっては、介護ロボットに不得手なことを任せることで、前向きに介護の仕事を続けられているようです。

行動モニタリング

AIを活用した行動モニタリングは、簡易センサーから収集した情報をAIが分析することで、利用者のプライバシーに配慮しつつ見守りを行うことができます。一人ひとりの情報を収集したデータをAIが学習するため、利用者それぞれに合わせた異常を感知します。その結果、不要なアラートが激減するため、職員の負担も軽減します。特に、職員が手薄な夜間の見守り回数が減るため、身体的にも精神的にも職員の負担が少なくなります。

ケアプラン作成システム

AIを活用したケアプラン作成システムでは、AIが学習しているビッグデータを活用します。モニタリングで得た情報を入力することで、システムが利用者のADLやIADL、認知症の状態などが改善する可能性の高いプランを提案します。また、大勢のケアマネジャーの膨大な経験を学習し続けるため、経験が浅いケアマネジャーでもケアプランの作成がしやすくなります。一人ひとりのケアマネジャーとしての知識や経験をかけ合わせることで、より説得力のあるケアプランの作成ができるようになるでしょう。

送迎支援サービス

通所サービスでは、送迎に関する業務が約3割を占めます。特に送迎計画は、道順や利用者同士の関係性、利用者本人の状態など、さまざまな状況を加味して作成しなければなりません。AI搭載の送迎支援サービスでは、もっとも手間のかかる送迎計画を自動化します。その結果、送迎計画にかかる時間を大幅に減少でき、業務効率化が実現します。また、自動化によって誰でも送迎計画の作成が可能になるため、責任者の負担を軽くすることも可能です。

音声入力システム

AI搭載の音声入力システムでは、話した言葉をAIが読み取って記録します。利用者名と介助内容を発話するだけで、AIが介護記録に関する言葉だけを記録化するため、メモや入力する手間が省けます。AI搭載の音声入力システムを導入した施設では、スタッフ1人あたり1日40分もの時間を削減できたとの報告もあります。介護請求ソフトと連携できるシステムの場合、記録や情報共有、請求業務を一貫して行えるため、業務をより効率化することが可能です。

介護業界でのAIを含むICT技術の導入は今後さらに活発に

AIは情報収集や解析を自動で行うことができるため、介護の業務に導入することで、介護業界が抱える課題を解決する一助となります。AIを含めたICT技術は日々進歩を遂げています。介護事業者にとって、AIに限らずさまざまなデジタル技術を活用して業務効率化を図ることは、今後重要になるでしょう。

ICT導入の入り口として取り組みやすいのが、介護ソフトの導入です。「介舟ファミリー」は、操作や見た目がわかりやすく、介護ソフトを初めて導入する事業者にも使いやすい設計となっています。介護AIの流れに今から慣れていくためにも、ぜひ介護ソフトの導入を検討してはいかがでしょうか。

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