「女性利用者の入浴介助を男性職員がする」
「私たちの施設は看護職と介護職の仲が悪くて、責任のなすり合いが絶えない」
など次から次へと真情報が溢れ出てきた。
「じゃぁ、どこなら入りたいですか?」と尋ねると、3秒ほどの沈黙の後に、「入りたい施設ねぇ、ないなぁ」とある介護職員が言う。
「そうだねぇ、ないよねぇ」と7人の相槌が入る。
このような職員の声を施設で暮らしている本人やその家族は知らない。
いや、言われなくてもわかっている本人や家族も少なくないはずだ。
ただ、わかっていながら口に出せずに我慢しているのだろう。
なぜなら、施設に要望を言えば、苦情と置き換えられ、明らかに足元をみた言動で振舞われ、その後は疎まれた肩身の狭い存在として暮らし続けなければならないからだ。
この状況を知っているからこそ、「入りたい施設ねぇ、ないなぁ」という本音が、介護職員から漏れてしまうのだろう。
利用者の家族からの苦情や職員の声と向き合うことを恐れるがあまり、耳触りのいいことばかりを言う仲間だけで周囲を固めた施設は裸の王様と化したも同然だ。
「私たちの感覚ってどこでも同じなんじゃないの」とある介護職員がまとめた。
残念なことではあるが、〝噂〟はあながち間違いではないようだ。