障害者雇用促進法改正で変更されたポイントとは?影響や対策についてわかりやすく解説

障害者雇用促進法改正で変更されたポイントとは?影響や対策についてわかりやすく解説

2022年に改正され、2024年に施行される障害者雇用促進法では、どのような変更が行われるのか?事業所を運営する責任者にとっては注目度が高いトピックでしょう。この記事では、障害者の法定雇用率の段階的引き上げ、平均工賃の水準に応じた報酬体系の見直しなど、改正ポイントを解説します。また、対策についても紹介します。

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障害者雇用促進法とは

障害者雇用促進法とは、障害者が職業生活を通して自立するための職業リハビリテーションの推進を柱にした法律です。また、障害者の職業安定を図るだけでなく、事業主が障害者を雇用する義務、差別禁止や合理的配慮の提供義務なども定めています。

ノーマライゼーションの理念

この法律が作られた背景にはノーマライゼーションの理念があります。障害の有無にかかわらず、個人として尊重される社会と、互いの人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を目指すという理念です。

障害者雇用促進法の前身は、1960年の身体障害者雇用促進法になります。その後、1976年には法定雇用率制度が義務化されました。そして1998年には知的障害者、2018年には精神障害者を雇用することが義務化されています。

障害者雇用促進法の改正ポイント

今回の障害者雇用促進法の改正点について解説します。

障害者の法定雇用率の引き上げ

改正の論点のひとつは、法定雇用率の引き上げです。
これまではおおむね5年ごとに0.1~0.2%の上昇でしたが、この改正では法定雇用率を0.4%上昇し2.7%の引き上げとなります。しかし、一気に上がるのではなく、段階的に上昇していくのが特徴です。2024年から2.5%、2025年に2.7%を達成すると設定されています。
また、雇用率の引き上げによって、雇用人数による障害者の雇い入れの基準も変更になりました。
2024年4月以降は、40人以上の雇用がある民間企業は法定雇用率に従って障害者を雇い入れる義務が生じます。
さらに2026年4月以降は、37.5人以上を雇用する民間企業も同様に障害者を雇用しなければなりません。このラインにいる企業の責任者は、今から準備をしておく必要がありそうです。
ただし、例外の職種も設けられています。例えば、建設業・鉄鋼業・道路貨物運送業・鉄道業・医療業・高等教育機関・介護老人保健施設・介護医療院・道路旅客運送業・小学校・幼稚園等です。
また、令和7年4月1日からは除外率も、各除外率設定業種に応じて、それぞれ10ポイント引き下げられます。ただし、現在、除外率が10%以下の業種は除外率制度の対象外となるので注意しましょう。

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平均工賃の水準に応じた報酬体系の見直し

改正の柱のひとつに工賃値上げがあります。そのため、平均工賃月額に応じて報酬体系ごとに見直しが検討されています。
理由としては、令和3年度報酬改定において新設された「利用者の就労や生産活動等への参加等」が増加し、「平均工賃月額」に応じた報酬体系との収支差率が高いためです。
目標の工賃を達成するための指導員を配置すると、加算の対象になるだけでなく、工賃が実際に上がった事業所は評価の対象となる可能性もあるようです。平均工賃の報酬見直しについて、具体的には以下のようになっています。

  • 平均工賃月額が高い区分は引き上げ、低い区分は引き下げ
  • 就労や生産活動等を評価し、基本報酬を設定
  • 多様な対応を行う事業所は人員配置6:1を新設

平均工賃月額の算定方法の見直し

現在の平均工賃月額は、工賃総額を各月の工賃支払対象者の総数で除して算定しています。しかし、それでは工賃支払対象者を利用日数にかかわらず1名としてカウントするため、日数の少ない障害者を受け入れた事業所は、平均工賃月額が低くなる傾向にありました。その不平等を解消するため、新しい算定式が導入されます。

【新算定式】
年間工賃支払総額 ÷(年間延べ利用者数÷年間開所日数)÷ 12 月

就労選択支援は令和7年10月に新設

就労選択支援の根拠法となる障害者総合支援法と障害者雇用促進法は、令和6年4月1日に施行されますが、就労選択支援の施行は、令和7年10月1日の予定です。利用者から希望を聞き、就労能力や適性を鑑みて支援していく予定です。

その際、就労アセスメントの手法を活用して評価を行うことから、適切な支援ができるような仕組みとなります。

アセスメント結果を踏まえて利用者と関係機関の担当者で協議し、就労系障害福祉サービス利用、または公共職業安定所等を決めていくのが基本の流れです。

精神障害者の特例の延長

週20時間以上30時間未満の労働者は0.5人としてカウントされていましたが、2022年度末までの限定で、精神障害のある短時間労働者に対しては1人としてカウントされる特例が設けられていました。この方針は、改正後もしばらく延長になる見込みです。

短時間障害者の雇用率に算入可能

従来週20時間以上の労働者だけを実雇用率としてカウントしていましたが、2024年4月1日以降は、精神障害者、重度身体障害者、重度知的障害者の短時間労働も実雇用率への算入が可能になります。

納付金制度についての改正

雇用率未達成企業からは納付金を徴収していた一方で、雇用率を達成している企業には調整金や報奨金を支給していましたが、その支給金額が引き下げられます。

また、障害者未雇用の企業が、実習生を受け入れた場合には経費を支援する措置が設けられました。

さらに、障害者を雇用している企業が、未雇用の事業主の見学を受け入れた場合も支援する案が浮上しています。

事業主支援を強化するための助成金の新設・拡充

調整金や報奨金の支給は下がりますが、相談支援の助成金が新設、または拡充となります。

  • 働いている人が年齢を重ね、今の業務を遂行するのが難しくなった場合、能力の開発や、業務を続けるための対応を行った企業には、助成金が受けられます。
  • 現在ある障害者介助等助成金、職場適応援助者助成金も拡充されることが決定したほか、職場実習や、見学の受け入れなどをした場合の助成金も新設されます。

改正による影響と対応策

今回の改正では法定雇用率の引き上げ、平均工賃の水準に応じた報酬体系の見直しなどで、給料体系が大きく変わります。
また、雇用に関しての細かいルールも設けられているため、さらに煩雑な事務処理が求められるでしょう。

そのような改正への対応として、介護事業者や障害福祉サービス事業所の運営責任者は、今から業務を効率化する策を立てておかなければ、通常の業務も回らなくなる可能性が出てきそうです。

対策の一環として、最初に考えなければいけないのがICT化に向けた整備でしょう。

すでにインターネット環境を構築している事業所は、現状で問題がないのかを検討することが必要です。また、紙ベースで事務作業を行っている事業所は、早急にデジタル化を検討する必要があります。

介護ソフトを導入することで改正内容に迅速に対応できる

2024年4月に施行される改正に備えて、事業所の責任者としては今からさまざまなことを準備しておくことが大切です。

特に、今回の改正はICT化を前提としているため、インターネット環境の構築はすぐに行う必要があります。

それと同時に介護ソフトの選定も欠かせません。すでに導入している事業所では、改正後の事務作業に今の環境が対応できるのか見極めておきましょう。

介護ソフトに関しては、各社から種々発売されているので、使い勝手、アフターフォローの面などをしっかりと検証してから導入すると失敗がありません。

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