その頃はスタッフ教育について悩んでいた私だった。次郎さんは「反省をする人は、本当に人の上に立つ人だとわしは思う。反省できない人には、上に立つ資格などない。それでいいんだ。『頭まわらな尾はまわらん』という言葉がある。貴女達の仕事は、本当にわしや家族を不安から安心に変えてくれる仕事だと思う。頑張って、それで良いんだよ」と・・・「見透かされたー!」と思った。この会話の3日後に、次郎さんは家族の見守られる中大好きなウイスキーを毎日飲んで、やすらかに息を引きとられた。
私たちエンゼルケアは、2人の訪問看護師で実施する。1人の看護師が次郎さんの体の後ろにまわって抱え、もう一人の看護師が家族とハグハグできるように、トントンと背中をさすりながら家族全員にお別れをしてもらう。妻は「お父さん今まで有難う。向こうに私が逝ったときは会おうね」といつも大人しかった長男は「親父、親孝行できなくてすまなかった」と泣いていた。私は「家に連れて帰ってくれたこと、本当に親孝行できたよ。お父さんいつも、感謝してるって看護師に話してたよ」と話す。家族は、涙を流されながらも清々しい表情であった。これが、訪問看護の遣り甲斐につながる。
私は、今でも反省するたび「反省する人は、人の上に立つ人だ」と語って下さった次郎さんの言葉を思い出し、訪問看護している。