ICTを活用した見守りがほとんど民間サービスであることから、社会福祉協議会や地域の人々によるネットワークでこれを導入する場合には、ICTをどう活かして異変把握するのか、その情報に人的にどう対応するのか、それを議論し合意を形成していかなければなりません。
ICT活用も高齢者の多様な状況に応じて使い分けていく必要がありますし、費用対効果の検証も必要です。
そのためには、ICT技術の専門家だけに頼るのではなく、地域福祉の専門家を交えて地域の多様な関与者が話し合いをし、社会実験で検証するなどのアクションリサーチが有効になります。
もう一つ大切なことは、高齢者の能動的な発信力の強化(エンパワメント)です。
私が長年取り組んできた「お元気発信」は、高齢者が自分で電話機から「今日も元気です!」と毎日発信する仕組みです。
発信がない日には、社協が電話かけをし、それでも通じない場合は民生委員等が訪問で安否を確認します。
これにより確実に孤立死を防ぐことができるとともに、高齢者の能動性や有用感が高まります。
最近、私は、スマホから転倒予防体操の動画にアクセスし、5名程度の仲間で体操実施回数を共有するアプリをつくり、社会実験を行いました。
仲間の存在が体操への取り組み意欲を高めるとともに、体操をしない仲間が気がかりになり自ずと安否確認をするようになることを明らかにしました。
こうした能動的なICT活用が、相互見守りの人的ネットワーク形成にも役立つのです。
人的見守りとICT活用見守りを重層化し、高齢者の能動性を強化する社会技術が見守りの質を高める、これが連載の結論です。
※1 IOT(Internet of Things)とは、モノがインターネットのように繋がり相互に制御する状態を指します。
見守りで例えれば、室内の温度・湿度設定装置と血圧・心拍を測定するリストバが相互につながり、体調にあわせた室内環境設定をするとともに、別居親族等の見守り者にそれを伝えることができます。
※2 AI(artificial intelligence)人口知能とは、人工的に人間の知能を模倣するための概念及び技術のことです。
大量のデータから規則性や関連性を見つけ出し、判断や予測を行うことが研究されています。
見守りで例えれば、高齢者の大量の歩容と転倒に関するデータを解析し、本人や介護者に転倒を防ぐための情報を出すことができるようになるかもしれません。