介舟ファミリー
介護ソフト・障害者福祉ソフト
介護現場では、バイタルチェックも介護士の重要な仕事のひとつです。しかし、経験が浅い介護士のなかには、バイタルチェックを行うことに不安を感じている人もいます。また、バイタルチェックの知識や測定方法、異常時の対応について、指導方法に悩んでいる指導者や管理者もいるのではないでしょうか。バイタルチェックは介護士が行える医療的行為のひとつであり、正しい知識を身に付けておけば、仕事上の不安を減らすことができます。この記事では、介護士が知っておくべきバイタルチェックの基本知識を解説します。
バイタルチェックとは、利用者のバイタルサインを測定して、今の健康状態を確認することです。バイタルサインとは、人間の生命に関する基本的な情報のことで、脈拍や呼吸、血圧、体温、意識状態のことを指します。このうち、介護現場では、脈拍・血圧・体温・呼吸の4つを測定しています。介護現場でバイタルチェックを行う大きな理由は、利用者の健康管理を行うためです。介護現場では、利用者が今どのような健康状態にあるかを知ることは重要です。継続的にバイタルチェックを行うことで、利用者一人ひとりの正常値を知ることができます。高齢者の場合、早期対応が必要な病気であっても、典型的な症状が出ないことがあります。普段からバイタルチェックを行い、正常値を把握しておくと、ちょっとした異変にも気づくことができ、異常時の早期発見、早期治療につながるでしょう。介護現場では、持病を抱えている高齢者の利用も多く、体調が急変することもあるため、バイタルチェックは欠かせない大事な仕事といえます。
医療的行為とは、医師や看護師などの免許を有する者が業務として実施する行為を指します。バイタルチェックが医療的行為に当たるのでは、と不安に感じている人もいるのではないでしょうか。過去には、介護現場では医療的行為に当たる行為とそうでない行為の線引きがあいまいで、判断に困る事態が発生した時期もありました。そこで、厚生労働省は2005年7月に通達を出し、以下の行為について、原則として医療的行為に当たらないとの見解を示しました。
また、2012年4月からは、介護福祉士および一定の研修を受けた介護士による喀痰吸引(かくたんきゅういん)と経管栄養の管理が認められています。
介護士が行うバイタルチェックは、脈拍・血圧・体温・呼吸の4つです。それぞれの測定方法と基準値、注意事項について、詳しく見ていきましょう。
脈拍は、基本的には自動血圧計で一緒に測定される数値を記録します。ただし、不整脈があるときには、手首に指をあてて直接測定します。手首で測定する際には、親指を除く3本指を手首の脈に当てて計測します。自分の脈拍と混ざるため、親指では計測しません。脈拍の適性数値は1分間に60~100回(高齢者の場合は、50~70回)です。
血圧は、自動血圧計で測定します。自動血圧計には、指式や手首式などさまざまなタイプがありますが、誤差が出やすいので、基本的にはカフ(上腕)式を使うとよいでしょう。測定の際は、1~2分間の安静時間を設け、楽な姿勢で座ってもらいます。背もたれに軽く寄りかかり、足を組まずにリラックスしている姿勢が理想です。測定部位は心臓の高さになるようにし、低い場合は本やクッションで調整します。カフは隙間ができないようにピッタリと巻きます。可能であれば、できるだけ同じ時間帯に測りましょう。血圧の適性数値は、収縮時血圧(最高血圧)130mmHg未満、拡張期血圧(最低血圧)85mmHg未満です。ただし、高齢者の場合は高血圧症を患っている人も多いため、主治医に正常としてよい数値の範囲を確認しておくと安心です。
体温は自動体温計で計測します。近年は非接触型の体温計が増えていますが、非接触型よりは腋下式のほうが正しく測定できます。腋下式の場合は、正しく腋下に挟むようにしましょう。成人の体温の適性数値は36~37度台です。ただし、体温は適性数値の個人差が大きいので、利用者それぞれの平熱を確認しておく必要があります。37度台が平熱の場合でも、38度以上の発熱はなんらかの体調不良のことが多いため、看護師や主治医の指示を仰ぎましょう。
呼吸は、1分間の呼吸数を計測します。計測されていると意識してしまうと、正しい呼吸数がカウントできません。利用者に計測していることを悟られないよう、体温や血圧などを測定しているときに胸の動きを見て数えるようにしましょう。呼吸数だけでなく、リズムや深さにも注目して、気になるときには看護師に相談します。呼吸の正常値は、1分間で12~20回です。
1点目は、利用者ごとの正常値を把握しておくことです。バイタルサインは利用者によって差があります。そのため、バイタルチェックでは一般的な正常値を指していても、利用者の正常値からは外れていて、実は体調が悪い場合もあるのです。一人ひとりの正常値を把握していれば、異常の早期発見につながり、適切な対応をとることができます。バイタルサインは利用者ごとに正常値が違うことを念頭におき、できるだけ一人ひとりの正常値を把握するよう心がけましょう。
2点目は、できる限り同じ時間にバイタルチェックを行うことです。バイタルサインは時間によっても変動します。測定時間が日によって違うと、どの数値がその人にとっての正常値なのか、今の状態が問題ない状況なのかがわかりにくくなってしまいます。平常時のバイタルチェックはできるだけ決まった時間に行いましょう。
3点目は、測定時は利用者への配慮を忘れないことです。介護サービスはさまざまな高齢者が利用しています。なかには、寝たきり状態であったり、反応することが難しかったりする人もいるでしょう。認知症でコミュニケーションがとれない利用者もいます。どのような利用者であっても、何も言わずにいきなりバイタルチェックを行うことは絶対にしてはいけません。「今からバイタルチェックを行いますね」と声をかけてから行うようにしましょう。
4点目は、数値だけでなく表情や行動にも注目することです。高齢者の場合、数値的に問題なくても、体になんらかの異変が起きていることがあります。表情や行動などにいつもと違う様子が見られるときには、必ず看護師に報告し、情報を共有しましょう。
介護士がバイタルチェックを行い異常値が出た場合には、速やかに看護師に報告します。報告するときには、数値だけでなく、ほかに自覚症状がないか、変わった様子がないかなども確認し、もれなく伝えることが大切です。いつもに比べて言葉数が少ない、笑顔が少ないなど、些細なことでも、気になることはすべて伝えましょう。報告後は、看護師の指示に従います。けっして、介護士が自己判断で対応してはいけません。もし、利用者から「これくらい大丈夫」といわれても、必ず看護師に相談することが大切です。
利用者の健康状態を知るうえで重要なバイタルチェックは、介護士が行っても問題のない行為です。経験が浅い介護士でも安心してバイタルチェックが行えるよう、事業所全体でバイタルチェックの知識を正しく身に付けることが大切です。介護士が安心して日々の業務に取り組めるよう、まずは指導する立場の者からバイタルチェックの知識について、しっかり学んでいきましょう。
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