人的見守りだけでは安否確認の確実性は高くない

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介護コラム

小川 晃子 氏

岩手県立大学 名誉教授・特命教授

人的見守りだけでは安否確認の確実性は高くない。
高齢化や人口減を背景として、地域における「見守り」の必要性が増しています。
しかし、見守りの質が語られることはあまりありません。
私はこの3回のエッセイで、そのことを書いていきたいと思います。

そもそも見守りとは何でしょうか。
日本語の意味としては、「無事であればいいがという願いをこめて、高齢者やこどもをみること」を指しています。
継続的な関わりのなかから、何らかの変化を異変として察知し、予防的な措置につなげる行為です。
見守りの行為者は、家族や近隣、福祉・医療の専門職など様々ですが、地域福祉では民生委員の役割の1つが見守りになっています。

その民生委員を対象として調査を行うと、半数以上の方が「見守りの方法が定まっていないので、どこまで行えばよいのか不安や悩みが多い」と回答されます。
まじめな民生委員ほど、異変が起きそうな方のところに足しげく通います。
ところが、見守られる側からすれば、それが「見張り」と感じられる場合も多々あります。

見張りになるのを避けるために、直接声かけをせずに「こっそり見守る」方法をとる見守り者が大勢います。
しかし、夕方になって「今夜も照明がついているから無事」と安心していても、家の中で倒れているかもしれません。
昼間は照明がつきっぱなしであることがわかりませんから、数日後に孤立死として発見される可能性もあります。

民生委員や近隣の人などによる見守りには、例えこっそり見守りであったとしても、長期的な関わりがあるからこそキャッチされる見守り対象者の変化や、それに伴う生活支援の必要性などを判断できる重要な情報が把握されており、これが見守りの質として重要です。
しかし、命の有無、すなわち「安否を確実に確認」することは、「こっそり見守り」などではできないと考えたほうがよいのです。

安否を確実に把握するためには、見守られる側から異変を発信してもらう方法や、情報通信技術を活用して自動的に異変を把握する方法を加えていく必要があります。
それは次回へ。

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